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生み出すアウトプットの質、量が大きく異なる。市民セクターにおいても人的資源の管理は最重要課題の1つである。なぜなら市民セクターは、企業組織のような利潤を生むための生産施設やサービス、販売網の構築などに対する設備投資を必要とせず、人的資源を中心として付加価値を生産し、配分する組織だからである。
市民セクターにおける人的資源は2つにわけられる。管理スタッフと被管理スタッフである。市民セクターは、企業組織ほど複雑柱組織階層(ヒエラルキー)をもたない。例外もあろうが、基本的には管理階層と被管理階層の2階層構造であると考えられる。
(a) 市民セクターにおけるリーダーシップ
まず管理階層について述べる。大規模な市民セクターにおいては、幾つかの管理階層構造をもつ体制がしかれ、その傘下に多くの被管理階層が拡がっている。しかし、小規模の組織においてはリーダーを中心とする少数のボランティアによって組織構成されているケースが多い。いずれにせよ、リーダーの素質が重要となる。リーダーの素質として重要なのは当然、組織のマネジメント能力である。しかし、多くの市民セクターにおいては、リーダーはマネジメントのプロフェッショナルではない。企業組織あるいは行政組織のように、被管理階層に一定期間在籍し、マネジメント・トレーニングを積み重ねながら、昇進し、マネジメントのプロとして能力を備え付けた者がその組織の上層部に配置され、多くの組織構成員を管理するという構図は、市民セクターにはみられない。すなわち市民セクターにおけるリーダーの多くは、マネジメントのアマチュアである4)。組織構成員を有機的に結びつけ、組織を合理的かつ効率的に運営し、質の高いサービスを継続的に社会に提供するという点においては、まだ市民セクターのリーダーシップは未成熟といえよう。市民セクターはリーダーを中心として、組織の理念という旗のもとにいろいろな背景をもつ人々が集まり、いわゆるハイブリッド型(混成)の組織を形成している。したがって、リーダーの交代や組織運営方針の変更などによって、すぐに解散、消滅してしまう市民セクターも少なくはなかろう。よって、何らかのプロ的組織管理能力を身につける必要がある。そのためには、行政や企業などから組織管理についてのノウハウを積極的に学び、導入する必要がある。ここに行政との連携上、市民セクターが必要とする行政からの支援の一側面が提示されるのである。
(b) ボランティアスタッフの管理
市民セクターにおけるもう1つの人的資源である被管理階層、すなわちボランティアスタッフについて述べる、被管理階層のマネジメントで問題となるのが、組織従属のインセ

 

 

 

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